インドを源流に、世界各国に広まったSARASA大航海時代に交易品のひとつとして世界中に運ばれた更紗がヨーロッパで大流行します。やがてオランダやポルドガル、唐人などによって日本へもたらされ、大名家や富裕町人、茶人たちを中心に更紗は大歓迎されました。そして日本独自に更紗は発展していきます。
身近にあった型紙染めを応用した和更紗は鎖国時代を経て迎えた文明開化のタイミングで大流行し、のちに琉球紅型や友禅染の染色技法へ影響をもたらします。染めの技法が用いられている更紗ですが、柄の持つ華やかさはそのままに、部分的にボリューム感を出すことで、織表現ならではの糸本来の光沢感を感じていただけます。
【花蝶文(かちょうもん)】
どんな生きものが描かれていると思いますか?繊細な線で描かれた模様の中に、鳳凰のような鳥や巻物、蝶など中国的な要素がある柄構成ですが、実はバリ島のジャワ更紗の古裂を参考にしています。見る人によってさまざまな表情をみせるモチーフたちは、私たちの想像力を引き出してくれます。
【丸文】
明治維新以前に日本へ渡ってきた更紗は、それ以後のものと区別するために「小渡り更紗」と呼ばれています。その代表的なものが井伊家伝来の「彦根更紗」。印度更紗を中心とした裂帳で、この丸文はその中のひとつとされ、日本人好みのデザインにつくられているともいわれています。
【蓮池水文(れんちすいもん)】
縁起が良いとされる「蓮」は中国語で「連」と発音を同じようにするため、良いことが次々と連続して起こることを意味し、水辺のモチーフと組み合わせて使用することが多いといいます。ちなみに参考にした更紗は赤子を抱えるための布として使われており、柄に蓮池文が使われていることから、赤子の成長を願うおもいが込められているのかもしれません。